大学院生の活動(博士後期課程)

博士論文

かつて、文科系における博士学位は、ライフワークを完成した碩学泰斗に与えられるものであると考えられていました。今や、博士学位は、研究者としての独り立ちのライセンスといった意味合いのものに変わり、ライフワークの終着駅ではなく、むしろ出発点であると考えられるに至っています。したがって、できるだけ多くの後期課程の学生が、在籍中に、あるいは遅くとも入・進学後6年以内に、博士学位を取得できることが望ましく、研究科としても、課程内における学位の取得を最大限促進し支援していきます。

とは言え、3年間以上後期課程に在籍しさえすれば、自然に学位が取得できるというものではありません。当然、質的、量的に一定以上の水準に到達する研究活動がなされねばなりませんし、さらにその成果は、レフリー付きの学会誌にアクセプトされることによって、その到達度がいわば客観的に示されねばなりません。

具体的には、後期課程に進学・入学すると、指導教員の助言のもとで研究活動を開始することになります。並行して、修士論文あるいはそれに代わる今までの研究成果を、査読付きジャーナルへの投稿論文にまとめます。後期課程の在学中に行った研究がレフリー付きの学会誌に受理されることが、博士論文提出のための基礎資格となります。

基礎資格を有する学生は、指導教員と相談の上、博士論文指導委員会の設置を願い出ることができます。そのためには、心理系の全教員の前で論文の構想を発表することが求められます。博士論文がまとまったら、研究科委員会に所定の手続きにしたがって提出し、そこで選出された審査委員によって審査が進められることになります。

これが、心理発達科学専攻における学位取得の標準的なルートです。できるだけ多くの人々が、できるだけ速やかに博士学位が取得できるように、促進、援助していきたいというのが基本的な考え方です。入学を志す皆さんも、博士学位の取得を目標とすることをあらかじめお考えおきください。

博士学位一覧

最近の博士学位論文のテーマ、及び博士学位の授与状況は以下の通りです。

  • 投映法の心理療法的バッテリーに関する研究-ロールシャッハ法と「穴」のある風景構成法の統合的活用-
  • ダンスパフォーマンスにおける巧みさの研究~ヒップホップダンスを対象とした動作分析から~
  • 対人葛藤時におけるコミュニケーション方略選好の規定因―葛藤初期の潜在化―顕在化に注目して―
  • 合意性推定に関する研究-社会的評価を受けやすい行動に着目して-
  • バウムテストの「ゆらぎ」の構造
  • 不適切な養育に影響を及ぼす親の認知行動プロセスに関する実証的研究
  • 鉄道の運転士を対象にした心理検査の評価と活用に関する研究
  • グループ学習における授業実践型相互教授の介入効果
  • フォーカシング指向心理療法の一技法としての“ThinkingAbout”の理論と臨床
  • クライエントの内面的自己開示を促進する要因-カウンセラーのSelf-involving技法およびSelf-disclosing技法の視点から-
  • 児童相談所の家族再統合に向けた心理援助に関する研究-子ども虐待の現場 実践からのモデル構築-
  • 企業倫理の問題に内在する倫理ジレンマのあり様の考察― 製造会社における事例研究を通して ―
  • 青年期の進路選択に関する親のサポートの研究
  • フラクタル構造からみた連続切替打動作の熟達
  • 青年期における時間的展望とアイデンティティ形成
  • メンタルヘルス専門家への援助要請に関する研究-社会的要因の役割とその規定要因に着目して-
  • 双極II型障害の臨床心理学的アセスメント―ロールシャッハ法とTATのテスト・バッテリーの有効性―
  • サッカーのインステップキックにおける腰部・支持脚のダイナミクス
  • 学生相談モデルにもとづくUniversity Personality Inventoryの再構成―主として項目反応理論を用いて―
  • 高機能広汎性発達障害児をもつ父母の心理的体験と社会的援助の在り方
  • 中学校教師が直面する生徒指導上の危機とそのサポート-校内外の身近なサポート源の有効活用を目指して-
  • 感謝による恩送りを支える心理的メカニズムの解明
  • The effects of collectivism on uncertainty threat perception and management(集団主義が不確実性脅威の認知と管理に及ぼす影響)
  • 危機状況での組織的な心理的支援体制構築における情報共有の役割に関する研究
  • Japan-Bangladesh Cross-Cultural Comparison on Elderly Well-being(高齢者のウェルビーイングに関する日本・バングラデシュの比較研究)
  • 乳幼児の母親が行うミラーリングの研究―ミラーリングが母子の社会的交流と言語発達に及ぼす効果について―
  • 肢体不自由児施設における虐待を受けた子どもの支援に関する研究
  • 学業場面における課題価値の機能と規定因の検討―課題価値の多面性に着目して―
  • 高齢者における転倒の原因解明とその予防可能性
  • 向社会的行動に関する文脈に応じた認知とその発達
  • 大学生がSNSに表出する精神的健康上の問題に関する研究
  • 小学校における包括的自己成長プログラムの開発‐いじめ問題をはじめとする心理的諸課題へのアプローチ‐
  • 制御焦点が社会的交換に及ぼす影響
  • Empathy and utilitarian judgment in sacrificial dilemmas(ジレンマ課題における共感と功利主義判断)
  • Emotional Competence, Relational Quality, and Interpersonal Conflict Management Styles of University Students: Cross-Cultural Comparison in Asia(大学生の感情コンピテンスと人間関係満足度および対人葛藤マネジメント・スタイルの関連ーアジアにおける文化比較)
  • 功利主義による排斥の正当化プロセスの解明
  • 完全主義と選択的注意バイアスとの関連の検討

論文提出者の声

古橋 健悟(臨床系/博士)

博士論文執筆を振り返って 
現所属:科学警察研究所

中島 卓裕(臨床系/博士)

博士学位論文執筆を終えた今思っていること
現所属:名古屋学芸大学ヒューマンケア学部専任講師

坪田 彩乃(行動系/博士)

博士論文を「書いた」今、思うこと
現所属:名古屋大学教育発達科学研究科

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