大学院生の活動(博士後期課程)

後期課程における研究と博士学位取得

日本では従来、文科系の研究領域での博士学位は、自分の学問体系を樹立したような大学者、いわゆる碩学泰斗に与えられるものだとみなされていました。そのため文科系では、自分の背の高さまで積み上げられるほど本を書いてはじめて学位が取得できるなどとさえ言われることもありました。そもそも国際的にはずいぶん以前から、博士学位はむしろ、自立して研究を営む研究者としての基礎資格のようにみなされてきたにもかかわらず、日本の文科系の学問の世界では、この考え方はなかなか浸透しなかったのです。

しかし、博士学位に関する考え方は、日本の教育学の世界でも、近年、急速に変化してきました。どの大学院でも、後期課程で十分な研究成果を上げた者に、博士学位を授与(課程博士)できるようなプログラムを検討するようになったのです。

本専攻でも、この問題について積極的に検討を重ねてきた結果、一昨年度の後期課程入学生から、下記のような博士学位論文作成のための、指導および審査制度を適用することになりました。この制度では、学生が、より幅広く、かつ柔軟な指導を受けられるように、複数講座にわたる指導教官グループの指導を受けるようになっているのも、ひとつの特徴です。後期課程学生は、これにもとづいて生産的に研究を進め、その成果を口頭発表や論文のかたちでそのつど世に問いながら積み重ね、博士論文の完成に向けて、着実に研究を進めていくことが期待されます。

なお、制度が確立したとはいっても、学位取得つまり博士論文の完成には、相応の努力が必要です。本専攻では、博士学位授与に値する学問的成果とは、その研究分野に学問的貢献をし得る研究成果を上げることだと考えています。具体的には、査読のある学会誌等の学術誌に、論文が一編以上掲載されることを、学位授与のために必要な、外的で客観的な基準としています。これを達成するためには、各自が当該の専門領域のこれまでの研究成果を十分に消化した上で、独創性ある研究を打ち立てていかなくてはなりません。スタッフもそのために最大限の努力をします。後期課程学生は、指導教官グループの指導を受けながら、博士学位取得を目的として研究に遭進してください。

なお、課程博士は、後期課程に3年以上在籍した者が、入・進学後6年未満に取得できますが、さまざまな事情でこれを取得しなかった場合には、博士論文の提出によって課程外博士(論文博士)を取得する可能性が残されています。この場合には、博士論文の構想をそれまでの業績等とともに提出して、指導・助言を受けて論文の完成をめざす「博士学位予備審査制度」が用意されており、これを活用することができます。

これまでの博士論文題目

以下に、これまで提出された博士学位論文のタイトルのいくつかを掲げます。これらには、論文博士を含んでいるので、包括的で大きなテーマも存在しますが、課程博士の取得のためには、 一定期間で研究をまとめ上げることの可能なテーマ選定と研究方法の選定が必要です。

  • 高等小学校制度史研究
  • <表象>としての言語と知識-人間形成の基礎的地平-
  • 英国メカニックス・インスティテュートの研究
  • 中国における社会主義大学制度の成立過程に関する研究-1950年代初期の大学教学改革を中心に-
  • 構成活動を中心とした音楽授業の分析による児童の音楽的発達の考察
  • 近代日本における過大学級・変則学級編成の実証的研究
  • <かかわり合い>の人間学-「教育的関係」論の地平-
  • フランス近代技術教育の成立史研究-エコール・ポリテクニクの技術者養成-
  • ドイツにおける職業教育・訓練のデュアルシステムの展開と構造
  • 高等女学校における食物教育の形成と展開-1943年中等教育改革を中心に-
  • 韓国近代大学の成立と展開-大学モデルの伝播研究-
  • 遊び論の幼児教育学的観点からの一考察-遊びを基盤とする幼児教育方法理論形成のための基礎的研究
  • フランスにおける教育審議会機関に関する研究-教育参加と民主制-
  • 現代アメリカ都市教育委員会制度改革と教育自治
  • 戦間期日本の高等教育発展-量的拡大政策をめぐる政治過程-
  • 日本における学校を基礎とした現職教育-教授-学習過程の改善における教師の意思決定の質的変化-
  • 授業分析における量的手法と質的手法の統合に関する研究
  • 社会主義中国における少数民族教育-「民族平等」理念の展開-
  • 大学と地域社会の連携に関する研究
  • インドネシアにおけるイスラーム改革運動と近代女子教育-ディニア・プトリの社会史-
  • グローバル教育における自己探究の構造
  • 地方改良運動下の小学校と地域社会-〈小学校拡張〉における教科外教育活動を通して-
  • 戦前期治療教育思想の研究
  • 中国近代教育と民衆の主体形成-民衆の抵抗と解放の教育営為を中心に-
  • ニューカマーのこどもと日本の学校文化-日系ブラジル人の教育戦略の観点から-
  • 明治期における教育博物館の発展と需要-東京都地方の教育博物館における教育普及活動にそくして-
  • 明治期における商業教育課程の形成と展開
  • 韓国における社会教育の起源と変遷に関する研究-大韓帝国末期から植民地時代までの近代化との関係に着目して-  

課程博士論文指導計画・作成プログラム

最後に、博士論文作成指導と審査のプログラムを掲げます。この制度は、学位取得を格段に促進することを目的としています。後期課程学生は、指導教員団の指導のもと、この制度を活用して研究を進め、博士学位を取得することが期待されます。

段階 期日 具体例 内容
プロポーザル段階 D1の5月末日 D1・5月 〈「研究計画」の提出〉
学修案内に記載されている書式に従って「研究計画」を作成し、教育科学専攻事務室に提出する。 正指導教員は、「研究計画」にもとづき、複数の研究領域から2~3名の論文指導教員(指導教員団)を専攻担当者会議に提案し、承認を受ける。
  D1の9月以降は
随時
D1・9月 〈「博士論文構成概要」(プロポーザル)の提出〉
学修案内に記載されている書式に従って「博士論文構成概要」(プロポーザル)を作成し、正指導教員に提出する。その構成には紀要論文・レフェリーつき学会誌論文の投稿計画が含まれていること。
 ↓
指導教員団が書類審査および面接(口述)を行い、指導の上、審査の合否を判定する。
 ↓
正指導教員は、指導教員団全員の署名捺印のある「審査報告書」を付して、専攻担当者会議に提出し、承認を受ける。
 ↓
公開発表会で発表する(日時はその都度決定する)。
  所定の単位
を修得した後
D3・9月 〈研究指導の認定〉
「研究経過報告書」を作成し、正指導教員に提出する。
正指導教員は、指導教員団の署名捺印のある「研究経過報告書」を研究科委員会へ提出し、「研究指導の認定」の承認を受ける。
  研究科委員会で「研究指導の認定」が承認された後 D3・10月 〈博士論文提出資格の審査〉
学位申請のための書類を作成する。書類のうち、1)学位申請書、2)主論文の要旨、3)履歴書、4)研究業績一覧、5)主論文(仮製本)を専攻担当者会議に提出し、博士論文の提出資格の審査を受ける。研究業績一覧には、原則として採録もしくは採録決定されたレフェリーつき学会誌論文が1編以上含まれていること。
学位審査段階 専攻担当者会議で
博士論文の提出資格が承認された後
審査委員会によって決定
D3・10月 〈博士論文提出〉
専攻担当者会議で提出資格が承認された後、学位申請のための書類をすべてそろえ、ただちに学位申請手続きを行う。
研究科委員会で学位審査委員の選出が行われる。
    D3・2月 〈博士論文最終口述試験〉
学位審査委員会による審査の過程で必要な指導を受け、最終の「口述試験」までに論文(本製本)を提出する。

審査結果は主査によって「審査報告書」にまとめられ、研究科委員会に報告される。研究科委員会で学位授与に関する協議の上、投票を行う。

        D3・3月 〈博士学位授与〉

論文提出者の声

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