教員・研究紹介

教授:江頭 智宏

EGASHIRA, Tomohiro (九州大学大学院) 博士(教育学)

20世紀ドイツの教育史を主な研究領域としており、最近は特に学校田園寮(Schullandheim)の歴史に主に焦点を当てています。林間学校に類似した学校田園寮は、ドイツ新教育運動の流れを汲む優れた教育実践です。しかしながらナチス期にはナチスの教育政策に利用されたり、第二次世界大戦後はナチスや戦争の過去を覆い隠すように機能した歴史を有します。理想的な教育活動がなぜ時として誤った方向に向かうこともあるのかについて学校田園寮を事例に考えています。

主要論文・著書

  1. 「第二次世界大戦後におけるドイツ無宗派福祉事業連盟(DPWV)と学校田園寮活動の繋がり−『ドイツ無宗派福祉事業連盟叢書』と『学校田園寮』に焦点を当てて−」『教育史研究室年報』第26巻、2021年、1-23頁
  2. 「第二次世界大戦下ドイツ・ハンブルクの学童疎開への学校田園寮運動の関わりに関する考察−ハインリヒ・ザールハーゲの学童疎開認識に焦点を当てて−」『名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要(教育科学)』第64巻第2号、2018年、67-81頁
  3. 「西ベルリン・ノイケルン区所有の学校田園寮に関する研究−東西分裂時代のヴァンゼ—別荘で存続した「教育の場」−」『日本の教育史学』第60集、2017年、71-83頁

教育史研究室の紹介

教育史研究室は、1949年5月に新制の名古屋大学が発足して教育学部が誕生したときに、「教育原論及び教育史講座」として設置されました。以来70年以上の歴史をもつ、教育学部でもっとも伝統ある研究室です。

近年の学部卒業論文のテーマ(一部)

  • 「19世紀イギリスにおける児童労働問題への取り組み」
  • 「ヒトラー・ユーゲントとナチス政権下の青少年に関する研究」
  • 「今日における子どもの読解力をめぐる議論に関する考察—リーディングスキルテストとPISA読解調査を踏まえて—」
  • 「高校野球文化の形成に関する研究」
  • 「人間の権威への服従性についての研究—ナチス体制下に焦点をあてて—」
  • 「グリム童話の変遷に関する一考察—子どもの読み物としての視点から—」
  • 「「夢」とキャリア教育の関係についての批判的検討」
  • 「子どもの居場所としての学校図書館づくりに関する研究—学校図書館専門職の充実の視点から—」
  • 「戦争における人間の心理状態に関する研究—第二次世界大戦下のドイツ兵を事例に—」
  • 「絵本『ちびくろサンボ』が辿った歴史的経緯—差別的表現が問題視された絵本の120年—」
  • 「ナチス・ドイツにおける教育政策の「成果」と「限界」に関する研究—ヒトラー・ユーゲントを事例にして—」
  • 「童話『赤ずきん』の変遷に関する考察—子どもに親しまれた童話の歴史—」
  • 「社会的養護における家庭養育優先原則をめぐる現状と課題」
  • 「戦前日本における旧制高等学校の寮歌の研究」
  • 「ヤヌシュ・コルチャックの思想と実践に関する研究−「子どもの権利条約の精神的な父」として−」
  • 「東京子ども図書館の源流と展開に関する研究−家庭文庫から始まった私立図書館の歩み−」
  • 「学制・教育令期における学業不振の実態に関する研究」
  • 「ナチスの収容所において協力を強いられた人間の心理状態に関する研究−アウシュヴィッツの女性音楽隊を事例として−」
  • 「国民学校における初等歴史教育の実践−大阪を中心にして−」

近年の修士論文テーマ(一部)

  • 「アジア・太平洋戦争期における教育雑誌統制—地方教育会雑誌を中心として—」
  • 「占領期日本における外国語科の成立過程—新制中学校を中心に—」
  • 「内藤湖南における東アジア観—時勢との関わりを中心として—」
  • 「高等学校定時制課程の教育課程に関する史的研究—愛知県の昼間二交代定時制課程を事例として—」
  • 「高度経済成長期における高等学校の再編」
  • 「中等教育機関の運動部活動に関する歴史的研究—1930年代から1960年代を中心に—」
  • 「ヴァイマル期における教育アカデミーの研究—新教育運動との関係に焦点を当てて—」
  • 「伊勢湾台風被災地における学生救援活動の研究—その実態と「地域防災計画」への影響に注目して—」
  • 「近代日本の教育学における〈習慣〉概念の展開」
  • 「ドイツ民主共和国における学校音楽教育の研究―1970年代に改訂された教科書の分析を中心に―」
  • 「戦中・戦後日本の留学生選考と受入れ体制に関する研究—1940年代から1960年代を中心として—」

近年の博士論文テーマ

  • 「大正新教育における教育方法改革思想の研究—ドルトン・プラン受容を中心として—」
  • 「教育令期における地方教育行政の再編に関する研究」
  • 「清朝末期内モンゴルにおける近代学校に関する歴史的研究」
  • 「近代日本教育博物館成立史」
  • 「米国対日英語教育構想と戦後日本の英語教育改革—新制中学校における外国語科の成立を中心に—」

教育史研究室はこれまで多くの研究者や教育実践家等を輩出してきました。
博士前期課程(修士課程)修了後には、公私立学校の教員や公務員、一般企業に進み、あるいは研究者を目指して博士後期課程(博士課程)に進学しています。
博士後期課程に進学したメンバーの多くは、大学や短大で専任の教員として活躍しています。

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