教員・研究紹介

教授:伊藤 彰浩

ITOH, Akihiro (名古屋大学大学院) 博士(教育学)

高等教育に関心がある。教育社会学的手法のメリットを十分に活かし、高等教育にかかわる政治・経済・文化過程を幅広い文脈のなかで考察したい。これまで特に3つの問題に取り組んでいる。すなわち、(1)近代日本高等教育の歴史社会学的研究、(2)現代日本の高等教育政策研究、および「(3)戦時期から戦後にかけての私立大学の経営行動に関する研究」である。

主要著作

  1. 「高等教育機関拡充と新中間層形成」(坂野潤治他編『日本近現代史3』岩波書店 1993年)
  2. 『戦間期日本の高等教育』(玉川大学出版部 1999年)
  3. “Higher Education Reform in Perspective: The Japanese Experience”,Higher Education,Vol.43,No.1,2002,pp.7-25.
  4. 「大学大衆化への過程−戦後日本における量的拡大と学生層の変容」(広田照幸他編『シリーズ大学2 大衆化する大学−学生の多様化をどうみるか』岩波書店 2013年)
  5. 早川操・伊藤彰浩編『新しい教育の原理』(名古屋大学出版会 2015年)
  6. 『戦時期日本の私立大学 成長と苦難』(名古屋大学出版会 2021年)

専門領域について

Q どのようなきっかけでこの学問を始めたのですか?

一冊の書物がきっかけでした。カラベル、ハルゼー編『教育と社会変動』(上・下、東大出版会)という本で、学部の2年生の終わり頃に読んだのですが、教育についてこんなアプローチの仕方があるのだと知って、目から鱗が落ちる思いをしたことを今でも鮮明に記憶しています。

現在の研究について

Q 現在の主要な研究の内容を教えてください

教育社会学は「何でもアリ」の学問ですが、そのなかで私は高等教育の問題を研究しています。
「(1)近代日本高等教育の歴史社会学的研究」については、戦間期から戦後期にかけての高等教育の量的拡大プロセスの特徴とそのインパクトについて調べています。簡単にいえば、日本の大学大衆化とは何だったのか、という問題をあつかっています。
「(2)現代日本の高等教育政策研究」については、いま大きく動いている高等教育政策をいろいろな観点から分析し、今後の展望を得ようと試みています。たとえば、高等教育政策形成における政府審議会の役割、および大学評価についての論文をまとめました。
ここしばらくは「(3)戦時期から戦後にかけての私立大学の経営行動に関する研究」にも取り組んでいます。戦時期という特殊な時代であるからこそみえてくる私立大学の姿があるということがわかってきて、研究って面白いと改めて思っています。

Q 今までの研究で一番心に残っている出来事、ハプニングを教えてください

これまでの研究活動で一番印象が強く残っているのは修士論文の執筆でしょうか。まとまった長さの学術論文を書くのは初めてで、自分なりにかなり苦労はしたが出来が悪く、提出してからしばらく嫌悪感にさいなまれたことを思い出します。ワープロがまだ普及していないころで、手書きで清書する際に、腱鞘炎になって苦しんだことも、いまでは良い(?)思い出です。

学生へのメッセージ

Q 求める学生像を教えてください、またその他なんでも結構です

ある方が教育社会学は「雑学」だとおっしゃってましたが、私もその通りだと思います。およそ教育にかかわることなら、テーマは何でも結構。そして社会学のみならず、経済学・人類学・政治学・歴史学・・・・使える道具はなんでもつかう無節操さ。そんな「雑種的パワー」(?)に魅力を感じる人、枠にはめられるのが嫌いな人にはおすすめの学問です。

指導生からひとこと

高度専門職業人コースのクラス「高等教育マネジメント講義」をご担当いただいています。20代から60代の社会人学生の中で、先生は一番物静かな存在です。不躾な質問や、的外れな質問…という学生からの攻撃(口撃)にも、右手を顎に当てながら丁寧に対処してくれます。社会人クラスという特性からか、アカデミックな内容からどんどん外れて現実社会への意見(愚痴かな?)が飛び交うことも。そんな時も、それとなく軌道修正され、講義は進行していきます。

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