教員・研究紹介
教授:金井 篤子
KANAI, Atsuko 名古屋大学大学院教育学研究科 博士(教育心理学)
職場に働く人々のメンタルヘルス(精神的健康)を支える理論とシステムの研究を中心として、ワーカホリズム(仕事中毒症)、職務ストレス、キャリア開発、ワーク・ファミリー・コンフリクト(仕事家庭葛藤)、企業内シニアのストレスなどの研究を行っている。また、並行して、職場に働く人々を援助する方法として、キャリア・カウンセリングについて研究中である。
主要論文・著書
- 働く女性のキャリア・ストレス・モデル−パス解析による転職・退職行動の規定要因分析 心理学研究,65(2),112-120 1994
- キャリア・ストレスに関する研究−組織内キャリア開発の視点からのメンタルヘルスへの接近− 風間書房 2000
- キャリア・ストレスとワーク・ライフ・バランス 日本労働研究雑誌、503、54-62.
専門領域について
Q どのようなきっかけでこの学問を始めたのですか?
私は中学生や高校生のころから、自分自身への関心から、いわば組織と個人、社会と個人の関係(そのころはこのように考えていたわけではなく、周囲に影響される自分とか、周囲が自分に要求するものについて考えていたわけです)に興味を持っていましたが、大学で社会心理学や産業組織心理学に出会い、自分の問いに答えてくれるのはこれだと思いました。特に、現在の研究に関わるようになったのは、大学卒業後、実際に企業で働いた経験から、働く自分(働く人々)たちが組織の中でいきいきと働くために必要な知見だと考えたからです。
現在の研究について
Q 現在の主要な研究の内容を教えてください
「組織の中で、自分がいかに自分らしくいきるか」というテーマを中心に、キャリア開発、職務ストレス、職場におけるメンタルヘルス、仕事生活と家庭生活のバランスなどを、実際に働く人にインタビューしたり、アンケートをとったりして、研究しています。
Q 今までの研究で一番心に残っている出来事、ハプニングを教えてください
大学院での最初の研究で、働く女性40人にインタビューをとったときに、自分の考えていたことは自分だけでなく、多くの人が感じていることなんだとあらためて実感したことが、最も印象的であり、私の研究生活の原点にもなったと思います。一方、その中で、自分の考えていることとはまったく異なる意見もたくさん出てきて、これは一種のハプニングだったと思いますが、研究の新たな視点を提供してくれたと思います。これが研究のおもしろさでもあると考えています。
講義について
Q 授業のねらい、背景を教えてください
キャリア開発という考え方は、産業界において非常に重要だという認識が高まっていますが、研究の方はまだあまり進んでいるとは言えません。この授業では、キャリアの概念について検討し、個々人がどのようなキャリアを持っているのか、それはどのように獲得され、開発されてきたかを検討することによって、これからのキャリアの開発可能性を探ることを目的としています。
学生へのメッセージ
Q 求められる学生像を教えてください、またその他なんでも結構です。
自分なりの問題意識と必然性を持つことが重要です。もちろん、その時点における問題意識で十分ですが、何も問題意識がないと得るものも少ないと思います。大学は問題意識を見つけるフィールドでもありますので、大いに活用してください。
指導生からひとこと
金井先生は“チャキチャキ”という言葉がよく似合う方です。テンポ良く歯切れ良く、時にちゃめっ気も交えてお話されるその姿には、親しみを感じます。もう一つの先生の魅力は、一度企業で働いたのちに研究をされているという経歴でしょう。そのような経験を持っておられる先生から、実践の場と研究の場をつなぎあわせる感覚を学ぶことができます。そんなチャキチャキの先生は指導生の研究や臨床実践の状況にも常に目を配って、指導をしてくださいます。「○○までに、○○してね!」という先生からの指導を受けて、指導生は「ドキッ」として冷や汗を滴らし、「やらなきゃ!」と自らに鞭を当てまたがんばるのです。自分に甘い指導生にはありがたい先生です。